何をするのも面倒くさい
歳をとるとすべてが面倒くさいらしい。
いや、もちろん50代の私だって、長い髪を乾かすのは面倒だし、毎日掃除機のたまったゴミを取り出すのは手間だし、歯を磨くのだってサボりたくなる。
でも、80歳を超えるとそのめんどくささは半端じゃないらしい。
座ったまま、すべてのものが手に届くような環境を作りたくなるらしく、ダイニングテーブルの上は、食べ物、文房具、請求書、化粧品、鏡、アドレス帳、雑誌、うちわ、雑巾、薬、血圧計、目覚まし時計、マフラー・・・となんでも揃っている。
着替えは非常に煩わしいようだ。特にボタンがある服は大変だ。かと言って、頭からかぶって着るような衣服はこれまた大いに時間がかかる。
ゴミをゴミ箱に捨てるのも面倒。小さなゴミは洋服のポケットかテーブルの上に、何ヶ月もそのままにする。
そのほかお風呂だって洗面だって、すべてすべて、面倒なのだ。
なぜだろう・・・?
それは、筋肉が衰えてしまったから。でも本人は意外とそれが理由だとは分からない。
だって、私も長い髪を乾かすのが面倒な理由が、筋力の衰えだとはまさか思わない。でも実のところそうなのだ。
人間は、どんな小さな動作をするためにも筋肉を使う。歳をとるとその筋肉がもう働いてくれないのだ。
筋肉の絶頂期は20代後半から30歳くらいまでで、その後は確実に徐々に筋肉はその力を失っていく。
腿の前面の筋肉を大腿四頭筋と呼ぶが、それは身体の中でももっとも大きな筋肉である。それだけにその筋肉の貢献度は高いのだが、この大腿四頭筋は年齢と共に1年に約1%ずつ、減っていく。
緩やかに減っていくので、なかなか気づきにくく、気づいた時にはもうかなり筋肉の喪失が進行していることが多い。もちろん病気ではない。単なる老化だ。
80歳の時には、筋肉の絶頂期から約50年経ってしまっているので、大腿四頭筋なら50%の筋肉が失われている。。。つまり半分になっている。それは、片足で立っているようなもの。あぁ、それで杖が必要なんですね。
今は当たり前にしている動作・・・食事中にお醤油を取る、テレビのスイッチをつける、手を洗う、ということがいつか億劫になり、やがて出来なくなる。それが老化というものだ。
お年寄りが、すべてのことが面倒なのは、怠け者なのではなく、筋力が衰えてしまって動くのに大変な労力がいるので、面倒になったのだ。
こんな簡単なことさえ、私は最近まで分からなかった。
老化には様々な現象が起きるが、中でも筋肉の衰退は人の生活に大きな影響を及ぼす深刻な問題だと思う。
デイサービスというお年寄りが利用する施設では、必ずと言って良いほど筋トレの時間があるのも頷ける。
若さイコール筋肉と言ってもよい。筋肉が自分から離れていかないように、頑張りたいものです。